のれん N-0401
棟方志功さんという有名な版画家さんがいらっしゃいました。
生前、棟方さんが木版を彫っている姿はまさに鬼気迫る姿でした。下書きなんてモノは存在せず、凄まじい勢いで彫刻刀で板を削っていく姿は、本当に神懸かりと言ってもよいでしょう。
煮詰まっている時は、いくらラフスケッチをしても何にも図案が浮かんできません。
出て来ない時に無理矢理図案化して染めてみても、大抵は失敗します。
あれやこれやと余計なことをしてしまい、なんだか中途半端なスッキリしないモノが出来てしまいます。
しかし、ある時には突然のように図案が降りてきます。
棟方志功さんではないけれど、「神さんが降りてくる」と言う感じで、夢の中だったり、何かの作業中だったり、全然図案を考えている時でない時に限って、イメージがはっきりしてきます。
そういう時に図案化したものは、すっきりと気持ちよいモノができ、お客さんにも喜んでいただけることが多いです。
このホームページの文章もどこからか降って湧いてサクサク書きたいものですが、、ついつい「のれん」の紹介文よりも余計なスッキリしない話ばっかり書いてしまっております。
N-0401
墨染めという素材に大きな存在感があるので、図案としてはすごくシンプルです。
松煙墨というのは市販の墨汁とは異なり、すこし青みがかった墨の色をしています。
そして僕の手で乳鉢を使って松煙墨をゆっくり溶いていきますので、機械で均一に溶かれた墨汁に比べて、墨の粒子が不均一になり、同じ墨色の中にも少し深みというか立体感がでます。これは染色、布を染めるという技術から見るとヘタクソな仕事になるのですが、スタジオ モフサの「のれん」としては必要な「色の表情」なのだと考えています。